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■出版情報

「MEMSの売上げを100倍」本間孝治  日経マイクロデバイス ( 2008/4 ) 紙面(PDF)
MEMSの売り上げを100倍へ

「儲からない」とさえいわれるMEMSファウンドリ事業。その中でも少量生産に特化して収益モデルを確立しつつあるのが、2001年創業のベンチャ、メムス・コアである。30名の技術集団が生み出す独自の製造技術で、受注を大幅に拡大しているという。3~4年後に、現在の100倍の100億円規模を狙える体制を構築する。創業者で社長の本間孝治氏に聞いた。

メムス・コア代表取締役
本間 孝治氏

--MEMSファウンドリ事業で受注を増やしているそうですね。
 ここ数年、MEMSに対する関心がデバイス業界の中で高まり、引き合いは増えてきましたが、受注金額はわれわれが期待したほど多くはなりませんでした。それが2007年夏ごろから、出荷個数の多い注文が入るようになり、受注額が大幅に飲み始めました。この結果、今年度(2007年10月~2008年9月期)には、前年度の2倍の2億~2億5000万円の売り上げが期待できるようになりました。来年度には、損益分岐点を越えて単年度黒字化できるようになる見込みです。ここまで見えたことで、次の飛躍に向けた手を打てるようにもなります。

--次の飛躍とは何でしょう。
 生産能力を拡大し、50億~100億円の受注を可能にする体制の実現です。2001年の創業当初、われわれの資本金は5000万円にすぎませんでしたが、出資を募り、2004年に3憶円で秋保工場(宮城県仙台市)を購入しました。この原稿の生産体制で10億円までの受注はこなせます。しかし、50億~100億円を狙うには、10億~20億円規模の新規投資と新事業モデルが必要となります。計画通りに進めば、来年度から資金を集め始め、その2~3年後に新たな生産体制を実現したいと考えています。

--売上に対して大きな投資となりますが、本当に巨額の受注をとれるのでしょうか。
 われわれのころには国内だけではなく、海外からも問い合わせが来ています。そうした顧客の要求にこたえていきます。なぜ海外メーカーがアクセスしてくるかというと、独自技術に基づき、少量生産に対応したファウンドリ・サービスを提供できる企業が我々以外にないからです。
 たてば米国なら、こうしたMEMSの製造ラインは大学にしかないでしょう。大学で生産すると、技術をオープンにしないといけないので、水面下で進めるプロジェクトには使えません。民間では大量生産を請け負うMEMSファウンドリが主体です。国内にある大手のMEMSファウンドリは、社内向けの生産が主体で、そこで忙しくなると、受注を受け付けない傾向があり、顧客の要望に十分こたえきれません。

--どのような応用分野に期待が持てますか。
 ライフ・サイエンス分野に大きく期待してます。例えば、バイオ・チップや食品の安全性を確認するためのセンサー・チップが挙げられます。特に食品向けセンサーでは、センサー・システムのうち検知部分のみを使い捨てにする使い方が主流になると考えています。使い捨てにするのは、検査履歴が次の検知に影響しないようにするためです。そうなると、例えば単価1000円のセンサー・チップの受注を年間数十万~数百万個見込めます。受注額ベースで最大数十億円規模となるうえ、ベンチャの我々にも対応できる生産規模となります。

--エレクトロニクス業界以外の企業が顧客の候補になりますね。
 例えば製薬メーカーとの連携を想定しています。製薬メーカーと組む場合、MEMSチップの製造はわれわれが担当しますが、利益の80%は製薬会社が持っていっても構いません。それでも採算が合います。また、製薬業界と組むセンサーチップなら、顧客ごとにカスタマイズした受託開発の枠を超えて、自社の独自製品として販売することができると考えています。50億~100億円を売り上げるには、こうした自社製品の販売も必要になってきます。

--MEMSの市場はLSIに比べてまだ小さい。今後も成長は継続するのでしょうか。
 最近LSIメーカーから問い合わせが増えています。特に欧米企業が多い。こうしたメーカーによると、MEMSがないと半導体が売れないというのです。半導体は人間で言うと頭脳部分。これと手足に相当するMEMS部分がセットになっていくと、海外のLSIメーカーは考えているようです。ですから、MEMSが拡大する余地は大きいと思います。  加えてLSIメーカーからは3次元積層化にMEMSデバイスやMEMS技術を組み合わせたいという需要も高まっています。残念なことに、日本の多くのLSIメーカーは、MEMSを取り込んでいくという考え方をあまり強く持っていないようです。この流れに取り残されないかと危惧しています。

--LSIでは日本勢は劣勢に立たされてました。今後、MEMSはどうなるのでしょう。
 このことは、私がMEMSで起業しようと思ったことと関係します。私は、日立製作所でLSIの研究開発に長らく携わってきました。しかし、LSI業界では、技術力がなくてもカネがあれば装置を購入して半導体製造ができるようになってしまいました。最先端のことをやっているようでいて、誰でもできる事業になったのです。技術者の出る幕がなくなったとも言えます。そこで、技術で付加価値を出せるMEMSに取り組もうとしたわけです。MEMSは、今後も技術力で勝負できる事業と言えます。

--MEMSでも汎用の製造装置は入手できるようになっています。
 確かに、われわれの製造ラインにある装置においても80%は汎用機です。しかし、20%はわれわれ独自の専用機です。専用機は、われわれの技術自身が中古装置を改良して組み上げたものです。例えばパッケージの気密性をチェックする測定器は自社で作っています。すべてを汎用機にしてしまうと、結局はLSIと同様にコストを安いところで作ったほうが良いということのなりま、我々に勝ち目はなくなってしまいます。(聞き手は、三宅常之)